大河ドラマ探訪521「光る君へ」25 古典文学探訪175 紫式部が清少納言に書くのを勧めたのが「枕草子」という描き方1

「光る君へ」で、越前に発つ前のまひろ(紫式部)が、ききょう(清少納言)に対して、出家した中宮定子のために、中宮から下賜された紙に何か書かれたらよいと勧め、ききょうがそれに応じて「枕草子」の冒頭の「春はあけぼの」の一節を書き出すという描き方がされていました。そういう事実や説があるのならともかく、そういうことを示す史料は一切なく、脚本家の大石静氏の創作であり、清少納言の主体性を排除しているという点で、問題があるように感じました。大河ドラマでは、とかく主人公を歴史的事件や出来事に絡めて描く(そういう事実がないにもかかわらず)ことが往々にしてありますが、この話でもそうです。もし清少納言を主人公としたドラマが作られたとしたら、こういう描き方はされないはずです。
 もっとも、「枕草子」に記載されている次のような話を脚本家が巧みに取り入れて、ドラマとして組み立てたものだと思われますが。
 すなわち、「中宮(定子)様に内大臣(伊周)様が献上なさっていた草子を、中宮様が『これに何を書いたらいいのか。天皇は、史記という書物を、草子に一部お書きなさった。私は古今集を書こうか』などとおっしゃったので、私は『私なら枕にしましょうか』と申し上げたところ、『それでは、そなたに取らせよう』とおっしゃって下さったのを、私は持って里に下がって、中宮様の御前あたりが恋しく思い出されるので、故事や何やと、限りなくたくさんある料紙を書きつくそうとした間に、いよいよ何ともわけのわからない事ばかりがたくさんあることよ」などと。
 もっとも、こういう記述は、今残存している本によって微妙に内容が異なっており、また意味がよくわからない箇所もあり、いろいろな解釈がされています。「光る君へ」では、ききょうが『枕詞(ことば)を書いたらどうでしょう』と中宮に言い、その話を聞いたまひろが『「史記」が敷物だから枕ですか』とききょうに尋ねたたところ、『よくおわかりだこと』」と答えていました。
 この「枕」という言葉の解釈について、「日本古典文学全集」(小学館)の「枕草子」の語注に、さまざまな説が紹介されています。すなわち「手控えの草子としての枕草子」「枕言(題詞)」「『史記』に対しての書名」「『しきたへの枕』からの連想でいったもの」「『白氏文集』の『秘省後庁』と題する詩の『白頭の老監書を枕にして眠る』に拠る」「寝具の枕」などと。
 「枕草子」の「枕」とは、枕詞の意味だとする説もあるので、大石氏はその説を採られたのでしょう。もっとも、「枕草子」の書名について諸説があり、今でも確定していませんが。  

この記事へのコメント