京都探訪393 京都国立近代美術館の「コレクション展」3 小野竹喬さんの「奥の細道句抄絵」2「浪の間や小貝にまじる萩の塵」「荒海や佐渡によこたふ天河」「象潟や雨に西施がねぶの花」

DSCF0301.JPG
 写真は京都国立近代美術館の「コレクション展」で展示されていた小野竹喬さんの「奥の細道句抄絵・浪(なみ)の間や小貝にまじる萩の塵(ちり)」を撮ったものですが、波が打ち寄せる渚に、小貝にまじって萩の花が落ちている様子を趣き深く描いています。この句は種(いろ)の浜(福井県)で詠まれたものです。芭蕉の句の小貝は、種の浜特産の「ますほ貝」であり(「奥の細道」の原文に記載があります)薄紅色をしており、萩の花の赤紫色もしくは白色と対応しているような気がします。絵では萩の花だけではなく葉などが描かれていますし、星形のもの(ヒトデでしょうか、花びらでしょうか)もあります。このあたりが、画家の自由な発想です。
DSCF0300.JPG
 自由な発想と言えば、「荒海や佐渡によこたふ天河(あまのがは)」の絵もそうです。昼間の景色として描かれ、空の天の川は見えません。荒々しい海の向こうに佐渡が島が横たわっていて、自然の厳しさ、雄大さが感じられ、独特の味わいがあります。芭蕉の句は夜の情景を詠んだものですが、実際に見た光景ではなく、想像の世界だと言われています。しかし、芸術的には実景か想像の世界かということは問題になりませんし、それで価値が劣るわけではありません。
DSCF0298.JPG
 「象潟(きさがた)や雨に西施がねぶの花」の絵も風情があります。雨にけぶる海、そこに浮かぶ島々の景色と、前景の咲いているねむの花の対比が印象的です。象潟は秋田県にありますが、かつては松島と並ぶ景勝地でした。
 芭蕉の句に詠まれている西施は、中国の春秋時代の美女ですが、雨にけぶっているねむの花を、憂いげに目をつぶっている西施にたとえているわけです。「ねぶ」は「ねむ」のことで、花の「合歓(ねむ)」と「眠る」の意を掛けています。芭蕉は、中国の詩人の蘇東坡が西湖の美しさを西施にたとえた漢詩のことを念頭に置いて、この句を詠みました。その漢詩では、晴れた西湖は丹念な化粧を施した西施に、雨の西湖は薄化粧の西施にたとえて、両方とも趣きがあると詠んでいます。私は中国旅行の時に西湖も訪ねましたが、確かに風光明媚な湖であり、西施にたとえられているのもうなずけました。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック