植村正純氏の随想「言葉との再会」1 「星の王子さま」に出てくる二度の「ADIEU(アディーユ)」 フランス文学探訪104

img279.jpg 短歌会の共同代表の三嶋氏から「日本言語文化研究」の会誌をいただきました。その中に、植村正純氏(短歌の師である植村武先生のご子息) の随想「言葉との再会」が掲載されています。まずフランス語の「ADIEU(アディーユ)」の語について考察されています。日本語では「さようなら」と訳されますが、フランス語では「永遠の別れ」を意味します。その例として、小説「星の王子さま」で2箇所の場面で使われていることに言及されています。一つは、星の王子さまが、旅に出る決心をする場面で、それまで世話してきたバラの花に「ADIEU」と声をかけます。その時、バラの花は星の王子さまが好きだったと告白するのです。
 もう一つは、「大切なものは目に見えないんだよ」と教えてもらい、仲良くなったキツネと別れる際に、互いに「ADIEU」と言い交わします。
 植村氏は「ADIEU」が「永遠の別れ」であることを知って、愛惜の情がにじみ出ている語だと感じ、読みが深まったと記されています。
 私も「ADIEU」という語の意味をあまり深く考えたことがなかっただけに、この言葉が、余計、胸に響きました。
 ちなみに、「仏和大辞典」(白水社)には、「ADIEU」の語意として、「永久に別れる相手に言う言葉」と記されています。それに対して、「AU REVOIR」の方は「近いうちに会うはずの相手に言う」言葉です。ただし、「地方により、ADIEUをAU REVOIRの代わりに使うところが多い。南仏、スイスでは人と出会った時のBONJOURと同義に用いる」とも記されていますが。この小説は、原義で捉えた方が味わいが深まるように思います。
「星の王子さま」を書いたサン・テグジュぺリはパイロットでもありましたが、第2次世界大戦に従軍し、1944年にドイツ機に撃墜され、亡くなりました。そのドイツ軍機のパイロットは、サン・テグジュペリ文学の愛読者だったということ(サン・テグジュペリ機だと知らずに撃墜しました)が近年になって報じられたと、植村氏の同書の中で触れられ、「世の不条理・無常を象徴するようなサン・テグジュペリの最後だった」と述べられています。そして彼の文学、人生について次のように総括されています。
 「この作家の人生の基底にあったものも、功利的・不条理な時代への反発、若くしての肉親との死別等による無常観、また生来とどまることのなかった探求心等を背負って『孤高に生きた人物』が伝える『孤独な魂の求愛』であった」と。
 サン・テグジュペリの本質を突いた言葉であり、孤独な魂=星の王子さま=作者自身と云えます。
 ちなみに、「星の王子さま」の挿絵は、すべて作者自身が描いています。

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