ドラマ探訪48 朝ドラ「おちょやん」3 「初代桂春団治」の舞台を再現・最初の妻「おたま」役は架空の設定・寛美さんが丁稚を演じて一躍有名に

 朝ドラ「おちょやん」で、二代目渋谷天外さん(ドラマでは天海一平)が脚本を書いた「初代桂春団治」の舞台の一部が演じられていました。松竹新喜劇の代表作ですが、一番印象的な、白装束の春団治が人力車に乗って天国へ行くラストシーンもありました。かつて藤山寛美さんが春団治を、曾我廼家文童さんが車夫を演じた場面が思い浮かびました。寛美さんと文童さんの漫才のような掛け合いが絶妙でした。
 この新喜劇では、春団治と京都の宿屋の娘である「おとき」との間に子供ができたのを知って、妻の「おたま」が身を引いて去ってゆきますが、この「おたま」のモデルが浪花千栄子さん(ドラマでは千代)だったということは、朝ドラを見るまで知りませんでした。そもそも、春団治の妻に「おたま」に該当する女性はおらず、架空の設定だったということも。ドラマでは、そういう話を入れたのは、一平の千代に対する贖罪であり、そういうふうに自分の駄目さ加減を自覚して春団治のこととして身を削ってまで描いたというふうに捉えられていましたが、実際、天外さんの思いはそういうことであったのではないかと思われます。
 劇の中で、家を出て行く「おたま」が、「芸人の女房にやきもちを焼くのは禁物やと言うけど、嘘やった。焼くときはしっかり焼いとかなあかんかった」とつぶやく場面がありますが、天外さんとの離婚を決意せざるをえなかった浪花千栄子さんの思いも同じようなものではなかったでしょうか。心に響く台詞です。
 DSCN0981.JPG 写真は2015年に朝日新聞に掲載された「松竹新喜劇」の特集記事から撮ったものですが、寛美さん、天外さん、曽我廼家十吾さん(星田英利さんが演じた千之助のモデル。ドラマでも描かれていたように、お婆さん役で有名でした)の写真が載っています。
 寛美さんが一躍有名になったのは、「桂春団治」の丁稚役でしたが、朝ドラ「おちょやん」でもこの場面は演じられていました。寛美さんのモデルは、松島寛治役の前田旺次郎さんで、見事にその役を演じていました。私はまだ幼かったので、「春団治」で寛美さん演じる丁稚役は、直接見たことはありませんが、他の演目でとぼけた丁稚役や「あほぼん」役を演じていたことは記憶にこびりついています。中でも天外さんが父親役を、寛美さんが「あほぼん」役を演じた「親バカ子バカ」は、2人の息がぴったりと合ってなんとも味わいのある親子を演じていました。テレビドラマ化もされましたが、ドラマ化されたのは、寛美さん主演の「桂春団治」もそうです。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック