フランス文学探訪99 サガン「ブラームスはお好き?」2 恋人の浮気心は改まらず、主人公も孤独のまま

 ポールとシモンは一緒に暮らすようになりますが、ポールはロジェのことが忘れられません。それに周囲の者の目も気になります。ポールが若い男と付き合っていることで、人から嫌味を言われ、傷つきますし、こんな関係がいつまで続くのかと将来に対して不安を覚えます。ロジェも付き合っている映画女優からシェリー(いとしい人)と呼びかけられ、相手にそう呼ばれる筋合いはないと怒り出す始末です。映画女優との関係が一時的なもので、自分が本当にいとしいと思っているのはポールだと気づくのです。
 ポールとロジェはそれぞれがカップルで来ている時に出くわし、それをきっかけに、ポールはロジェとのよりを戻すのです。シモンがポールの元を去ってゆく時、ポールは「シモン、私はもうお婆さんなの」と呼びかけますが、彼の耳には届きません。ロジェが来るのを待っていたポールのところにロジェが電話してきます。用事が出来たから、行くのが遅くなるという、昔から何度となく繰り返されてきた言い訳です。
 小説はそこで終わりますが、ロジェの浮気心は改まらないことを暗示したラストです。ポールは前と同じように、孤独と寂しさを味わわされることになるのでしょう。
(2004年02月29日 公開)

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