フランス文学探訪86 ジイド「法王庁の抜穴」2  絡み合い、錯綜した人間関係

 第一章では、無神論者の秘密結社員アンテムが動物実験三昧の生活を送っていたのに、ある時、聖母の像に乱暴を働き、その夜、聖母が夢に現れたのをきっかけにして、自分の足が治るという奇跡が起こります。彼はそれで信仰心が芽生え、カトリックに帰依しますが、教会の援助は得られず、破産同然の身の上になります。 
 第二章では、アンテムの義弟の作家ジュリユスが、余命わずかな父親から、隠し子のラフカジオの調査を頼まれます。ラフカジオはプライドの高い反抗児ですが、初めて父親の存在を知り、父との対面を果たし、ジュリユスとも親しくなります。火事で建物に閉じ込められた子供を救うという果敢な行動もし、その際、ジュリユスの娘のジュヌビエーブとも顔見知りになります。
 第三章では、ジュリユスの妹の伯爵夫人のところに、偽の僧侶プロトスがやって来て、今の法王は偽者で本物はとらわれの身の上であると述べます。本物の法王を救い出すには資金がいると言い、プロトスはまんまと夫人から金をせしめます。夫人はその話を親しいアルニカにしたところ、その夫のアメデは法王救出に手を貸そうとして、一人イタリアに旅立ちます。
 第四章では、そのアメデの行動が綴られます。プロトスは彼の行動を見張るべく、自分の恋人であるカロラをアメデに近づけたり、彼らの仲間である偽の枢機卿と対面させたりします。彼らは百足組という詐欺集団で、その首領のプロトスはラフカジオのかつての友達でした。
 第五章では、恐ろしい話になります。ラフカジオはたまたま同じ汽車に乗り合わせた、見ず知らずのアメデを衝撃的に突き落としてしまうのです。動機なき殺人を犯してみたかったというただそれだけの理由です。その現場をたまたま見ていたプロトスは、かつての旧友のために偽装工作をします。プロトスは自分を密告したカロラを殺して、逮捕されます。ジュリユスは青年が無償の行為の殺人、すなわち動機なき殺人をする小説というものを考えていました。ラフカジオがその小説を具現化したと言えるわけですが、実際、ラフカジオが自分の犯罪を彼に告白した時、現実と小説は違うのだというわけでしょうか、彼は「せっかく君が好きになりかけていたのに」と言って、ラフカジオを突き放してしまいます。ジュヌビエーブもひそかにその告白を聞いていて、ラフカジオのもとを訪れ、その夜二人は結ばれます。ラフカジオがこの後、自首するのかどうか分からず、小説はそこで終わっています。
 以上が大体のストーリーですが、登場人物が互いに絡み合って、かなり錯綜しています。アンテムの妻ベロニック、ジュリユスの妻マルグリット、アメデの妻アルニカは三人姉妹ですし、カロラは最初プロトスの恋人だったのが、次にラフカジオの恋人になり、またプロトスのところに戻りますが、アメデに同情して、彼がプロトスに殺されたと思い込んで警察に密告するわけです。

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